脱サラ社長 なかじぃ
大手電機メーカーで15年間、開発部での主任設計リーダーを経験後、コンサルタントとして独立。特に若手社員向けのビジネスコミュニケーション研修を得意してきました。
自身も20代の頃、言葉遣いの失敗から大きな契約を失いかけた苦い経験があり、その反省から得た「現場で本当に役立つ言葉の技術」を伝えることを信条としています。
上司への返信メールで「頑張ります」と書いた後、もっと気の利いた言い方はなかったかな…と不安になった経験はありませんか?
頑張ります、か。僕も新人の頃、そればかり使って先輩に苦笑いされたものです。やる気は人一倍だったんですが、どう表現すればいいか分からなかったんですよね。
でも大丈夫。実は、ビジネスシーンで本当に使える言い換えは、まず3つの『鉄板フレーズ』を覚えるだけで十分です。
この記事では、50もの類語リストにあなたを溺れさせるのではなく、明日から迷わず使える「鉄板の3つ」とその完璧な使い分けだけを、元営業マネージャーの私が徹底解説します。
読み終える頃には、あなたの言葉選びへの不安は自信に変わり、上司や先輩からの信頼度が確実にアップしますよ。
なぜ、あなたの「頑張ります」は“響かない”のか?

本題に入る前に、少しだけ私の失敗談をお話しさせてください。
あれは新人だった頃、大きなプロジェクトのメンバーに抜擢され、やる気に満ち溢れていました。部長から「この案件、期待してるぞ」と声をかけられ、私は満面の笑みで「はい!精一杯頑張ります!」と答えました。
しかし、部長の表情は少し曇っていました。後で指導役の先輩から「佐藤、お前の『頑張ります』は具体的に何をするのかが見えないから、部長も不安に思ったんだぞ」と教えられました。
研修で受講者の皆さんにも「なぜ『頑張ります』では不十分なのでしょうか?」とよく質問されます。その答えは、当時の私が指摘された通り、「頑張る」という言葉には「具体性」が決定的に欠けているからです。
相手が知りたいのは「どう頑張るのか」という行動の部分です。「頑張ります」という言葉だけでは、その具体性が伝わらないため、相手に「気持ちは分かったけど、本当に大丈夫かな?」という漠然とした不安を与えてしまいます。この小さな不安が、ビジネスにおける信頼関係の構築を妨げる最初の壁になるのです。
まずはこれだけ!信頼される若手の鉄板フレーズ3選

では、具体的にどうすれば良いのでしょうか。答えはシンプルです。まずは以下の3つのフレーズを使いこなすことだけを考えてください。
守備の「承知いたしました」、攻撃の「尽力いたします」、そして約束の「〜いたします」。この3つが、あなたのビジネスコミュニケーションの基本形です。
これらの言葉がなぜ重要かというと、一つひとつが信頼関係を築くための明確なステップに対応しているからです。
- 「承知いたしました」で、まず相手のボールを確実に受け止める。(受領の明確化)
- 「〜(いたします)」で、次に行うアクションを具体的に約束する。(行動の宣言)
- 「尽力いたします」で、その行動に対する強い決意と責任感を示す。(決意の表明)
この流れを意識するだけで、あなたの返答は「意欲だけの精神論」から「信頼できるビジネスパーソンの行動宣言」へと劇的に変わります。
信頼獲得の3ステップフロー図

【シーン別】言い換え実践ドリル(メール例文付き)
それでは、3つの鉄板フレーズを実際のビジネスシーンでどのように使い分けるか、具体的な例文を交えて見ていきましょう。
H3: vs 上司(指示や依頼を受けた時)
上司からの指示に対しては、スピード感と確実性が求められます。
【NGメール例文】
件名:Re: A社向け資料作成の件
〇〇部長
ご連絡ありがとうございます。
資料作成の件、承知いたしました。
頑張ります。
佐藤
【OKメール例文】
件名:Re: A社向け資料作成の件〇〇部長
ご連絡ありがとうございます。
A社向け資料作成の件、①承知いたしました。
まずは構成案を作成し、本日17時までに一度ご確認②いただけますでしょうか。
ご期待に沿えるよう、③尽力いたします。
佐藤
NG例の「頑張ります」では、いつまでに何をするのかが全く分かりません。OK例では、3つの要素(①受領、②具体的な次の行動、③決意)を盛り込むことで、上司は安心して仕事を任せることができます。
H3: vs 取引先(納期回答や要望への返信)
取引先とのコミュニケーションでは、安心感と誠実さが信頼関係の鍵となります。
【NGメール例文】
△△様いつも大変お世話になっております。
お見積もりの件、ありがとうございます。
急ぎますので、頑張ります。株式会社△△
佐藤
【OKメール例文】
△△様いつも大変お世話になっております。
お見積もりのご依頼、誠にありがとうございます。
明日12月16日(火)の午前中までに、必ず送付いたします。
取り急ぎ、ご依頼を賜りました旨、ご連絡申し上げます。
株式会社△△
佐藤
この場合、「頑張る」という意欲よりも、「いつまでに」という具体的な約束が、取引先の安心に繋がります。「〜いたします」という行動の約束が最も効果的です。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「尽力」や「精進」といったフォーマルな言葉は、社内の気軽なチャットでは多用しないようにしましょう。
なぜなら、これらの言葉は少し硬い印象を与えるため、相手との心理的な距離を生んでしまう可能性があるからです。多くの若手社員が、丁寧さを意識するあまり、どんな場面でも最も硬い言葉を選んでしまうという失敗をしがちです。まずは「承知いたしました」と「〜します」を基本とし、重要な場面で「尽力」を使う、という使い分けがおすすめです。
「意欲を示す言葉」の使い分けマップ
| 表現 | 使う相手 | フォーマル度 | ニュアンス・使い所 |
|---|---|---|---|
| 尽力いたします | 上司、取引先 | ★★★ | 依頼された業務や目標達成のために、力を尽くすことを約束する。最も汎用性が高い。 |
| 精進いたします | 上司、師匠 | ★★☆ | 自分のスキルアップや成長に向けて努力する姿勢を示す。日々の業務より、長期的な目標に対して使う。 |
| 努めてまいります | 上司、顧客(全般) | ★★☆ | あるべき姿や状態を維持・実現するために、継続的に努力することを表明する。 |
よくある質問(FAQ)
Q1. もし間違った言葉を使ってしまったら、どうすればいいですか?
A1. 気づいた時点ですぐに訂正すれば、全く問題ありません。「先ほど『〇〇』と申し上げましたが、正しくは『△△』でございます。失礼いたしました」と素直に伝えましょう。誠実な対応は、かえってあなたの信頼を高めます。
Q2. 社内のSlackなど、カジュアルなチャットでも使った方がいいですか?
A2. 相手や状況によりますが、基本的には「承知いたしました」を「承知しました」や「かしこまりました」に、「いたします」を「します」にするなど、少し柔らかい表現に調整するのが良いでしょう。大切なのは、言葉のフォーマル度を相手との関係性に合わせてチューニングすることです。
まとめ:言葉遣いは、あなたを映す鏡です
今日からあなたの武器になるのは、「①承知いたしました」「②〜いたします」「③尽力いたします」の3つです。
- まず「承知いたしました」で、相手の依頼をしっかりと受け止める。
- 次に「〜いたします」で、具体的な行動を約束し、相手を安心させる。
- そして「尽力いたします」で、その仕事への真摯な姿勢と責任感を示す。
「頑張ります」という言葉が悪いわけではありません。しかし、その言葉が持つ具体性の欠如が、ビジネスの現場では時として相手を不安にさせてしまうのです。
言葉遣いは、あなたという人間の信頼性を映す鏡です。この3つの鉄板フレーズを使いこなせば、必ず周りの見る目が変わります。
まずは、今日送るメールで「承知いたしました」を一度、意識して使ってみてください。その小さな一歩が、未来の大きな信頼に繋がっています。
[参考文献リスト]
- 「『頑張ります』は失礼な場合も?ビジネスシーンで使える“言い換え”と“返し方”【秘書のマナー講座】」, kufura
- 「『頑張ります』の言い換え50選!ビジネスシーンで使える敬語や英語表現」, 社会保険労務士法人つみき
- 「『頑張る』の言い換え|類語・敬語・英語表現を例文付きで紹介」, TRANS.Biz


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