「4人の名前、どうやってこのスペースに書くんだ…」
のし袋と筆ペンを握りしめて、デスクで固まってしまった経験はありませんか?
職場の同僚や上司への出産祝いを、部署のみんなで贈る。その取りまとめ役である幹事にとって、のし袋の表書きは最初の、そして最大の難関です。失敗して書き損じれば袋を買い直さなければなりませんし、何より、マナー違反をして上司や部下に「常識がない」と思われることだけは絶対に避けたいはずです。
安心してください。実は、4名以上の連名をのし袋の表に無理やり書く必要はありません。むしろ、「別紙」を使った方が、受け取る相手にとっても親切であり、ビジネスマナーとしても正解なのです。
この記事では、元総務部マネージャーとして数え切れないほどの「のし袋」を見てきた私が、忙しい幹事の皆さんのために、スマホを見ながら3分で完璧に作成できる「実務特化型」のマニュアルをお届けします。
「奉書紙なんて持っていない」という方のために、オフィスにあるコピー用紙を使った代用テクニックから、字に自信がない人でも失敗しない「神筆ペン」の選び方まで、現場ですぐに使えるノウハウを網羅しました。この記事を読み終える頃には、あなたは迷いなく美しいのし袋を完成させ、自信を持って「おめでとう」を伝えられるようになっているはずです。
3名までと4名以上で違う!連名の「正解」ルール早見表

出産祝いの書き方において、最も多くの幹事が頭を悩ませるのが「連名の書き方」です。しかし、ここには明確なルールが存在します。それは、「3名まで」と「4名以上」で、書き方が根本的に変わるということです。
このセクションでは、人数による書き方の違いと、なぜそのように書き分ける必要があるのか、その理由を解説します。
なぜ4名以上の連名をのし袋に書いてはいけないのか
結論から申し上げますと、4名以上の連名をのし袋の表書き(水引の下)に書くことは、マナー違反ではありませんが、推奨されません。
理由は大きく分けて2つあります。
1.見た目の美しさと可読性の問題
一般的なのし袋の幅に4名以上の名前を並べると、どうしても文字が小さくなり、窮屈な印象を与えます。筆文字が潰れてしまい、受け取った相手が「誰からの贈り物なのか」を判読できなくなるリスクも高まります。お祝いの席で渡すものですから、パッと見て美しく、堂々とした佇まいであることが重要です。
2.序列(ステータス)の表現が難しくなる
ビジネスマナーにおいて、名前の並び順(序列)は非常に重要です。通常は右側が上位(目上)となりますが、人数が増えれば増えるほど、このバランスを取るのが難しくなります。特に文字サイズを調整して全員を収めようとすると、意図せず上司の名前が小さくなってしまったり、中心がずれてしまったりする「事故」が起きやすくなります。
3名までの連名の書き方:右上位の原則を徹底する
贈る人数が3名までの場合は、のし袋の表書きに全員の氏名を記載します。この時、絶対に守らなければならないのが「右上位(みぎじょうい)」の原則です。
- 職場の同僚(序列がある場合):
最も目上の人(職位が高い人)を一番右に書きます。そこから左へ向かって、順に職位が低い人の名前を書いていきます。 - 友人同士(序列がない場合):
五十音順で右から左へ書くのが一般的です。これにより、「なぜ私の名前が一番左(下座)なのか」といった無用なトラブルを避けることができます。
3名連名の場合、全体のバランスを中心(水引の結び目)に合わせるのがコツです。真ん中に2人目の名前が来るように配置し、その右に1人目、左に3人目を書くと、左右対称の美しい仕上がりになります。
4名以上の正解は「代表者名+外一同」
では、今回のペルソナである佐藤さんのように、4名以上のメンバーで贈る場合はどうすればよいのでしょうか。
この場合の唯一の正解は、表書きには「代表者の氏名」のみを書き、その左側に少し小さく「外一同(ほかいちどう)」と書き添える方法です。そして、全員の氏名は「別紙」に記して中袋に入れます。
この「連名(4名以上)」と「別紙(奉書紙)」の組み合わせこそが、多人数での贈り物をスマートに解決する最良の手段です。
表書きを「代表者名+外一同」にすることで、のし袋の見た目は非常にスッキリとし、格式高い印象を与えます。また、受け取った相手も「〇〇さんの部署の皆さんから頂いたのだな」と一目で理解できます。
「せっかくお金を出したのに、自分の名前が表に出ないのは寂しい」という意見が出るかもしれませんが、そこは幹事として「全員の名前を美しく、失礼なく届けるための正式なマナーである」と説明し、理解を求めましょう。その代わり、中に入れる「別紙」には、全員の名前をしっかりと記載します。
人数別!出産祝い連名の書き方「正解」レイアウト

【図解】コピー用紙でOK!4名以上の「別紙」の書き方と折り方

「別紙が必要なのはわかったけれど、そんな紙、オフィスにないよ…」
そう思われた方も多いでしょう。正式には「奉書紙(ほうしょし)」と呼ばれる和紙を使いますが、現代のビジネスシーンにおいて、わざわざ奉書紙を買いに走る必要はありません。
このセクションでは、「別紙(奉書紙)」の代用品として「コピー用紙」を活用する方法と、具体的な書き方・折り方を、図解を交えて徹底解説します。
「奉書紙」がなくても大丈夫。コピー用紙が許される理由
本来、目録や別紙には、厚手で純白の和紙である奉書紙を使うのが正式なマナーです。しかし、職場の同僚や部下、親しい友人への出産祝いであれば、清潔な白無地のコピー用紙(A4サイズ)で代用してもマナー違反にはなりません。
重要なのは「紙の質」そのものよりも、「全員の名前と住所を、相手が読みやすい形で明記する」という配慮です。
ただし、以下の点には注意してください。
- 裏紙は絶対NG: 必ず新品の真っ白な紙を使ってください。
- 再生紙より上質紙: 可能であれば、少し厚手で白色度の高い「上質紙」や、文具店で売っている「便箋(罫線なし)」を使うと、より丁寧な印象になります。
- インクジェット紙: 意外におすすめなのが、プリンター用の「マット紙」です。適度な厚みがあり、筆ペンやボールペンのインクも滲みにくいため、書きやすさは抜群です。
このように、「別紙(奉書紙)」と「コピー用紙」は、現代の儀礼においては実用的な「代用可」の関係にあります。安心して手元のコピー用紙を一枚取り出してください。
別紙のレイアウト完全ガイド(上段「寿」、下段の書き順)
それでは、実際に別紙を書いていきましょう。手書きでも構いませんし、字に自信がなければPC(Wordなど)で作成して印刷しても全く問題ありません。むしろ、PC作成の方が読みやすく、相手が内祝い(お返し)の手配をする際に住所録として活用できるため、喜ばれることも多いです。
【別紙の構成要素】
用紙は横長に使います。
- タイトル(上段中央):
紙の上部中央に、少し大きめの文字で「寿」または「御祝」と書きます。 - 氏名(下段):
紙の下部に、右側から順に全員の氏名を書きます。ここでも「右上位」の原則が適用されます。- 一番右:最も目上の人(部長など)
- 左へ向かって:職位順に並べる
- 同列の場合:五十音順
- 住所(氏名の右側または下):
各人の氏名の横、または下に、住所を記載します。これは、相手が内祝いを贈る際に必須となる情報です。社内で手渡しする場合でも、育休中の相手に郵送される可能性があるため、省略せずに書くのが親切です。 - 金額(任意):
一人ひとりの拠出額が異なる場合は、氏名の下に「金 参千圓」のように金額を記載します。一律の場合は省略しても構いません。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 別紙はPC作成(Word/Excel)で作成し、プリントアウトするのが現代の「賢い幹事」の選択です。
なぜなら、手書きの文字(特に住所の数字など)は読み間違いが起きやすく、配送ミスの原因になるからです。PCで作成すれば可読性は完璧ですし、データの再利用も可能です。「手書きでないと失礼」と考える人は、今の現役世代にはほとんどいません。効率と正確さを優先しましょう。
お札と同じ「三つ折り」が鉄則。折り方の手順
書き上がった別紙は、そのまま中袋に入れるわけにはいきません。適切なサイズに折る必要があります。ここで重要なのが「折り方」です。
慶事(お祝い事)では、「三つ折り」にするのが基本です。「四つ折り」は「四=死」に通じるため、絶対に避けてください。
【三つ折りの手順】
- 書いた面を内側(または外側でも可ですが、開いた時に文字が見えるように)にして置きます。
- 紙の左側 3分の1を内側へ折ります。
- 次に、紙の右側 3分の1を、左側の上に被せるように折ります。
- ポイント: 慶事では「右前(右が上)」になるように折るのが作法とされることが多いですが、紙の折り方に関しては流派や地域により異なります。最も重要なのは、中袋から出した時に、自然に開いて文字が読める状態になっていることです。
お金の入れ方と中袋の扱い
別紙が完成したら、お札と一緒に中袋(内袋)に入れます。
- お札の向き: お札の肖像画(顔)が表側、かつ上に来るように揃えて入れます。
- 別紙の位置: お札を取り出した後に別紙が見えるよう、お札の「裏側(背中側)」に入れるか、あるいはお札を包むようにして入れます。
- 中袋の書き方: 中袋の表中央には「金 〇〇圓」と包んだ合計金額を書き、裏面には代表者の住所と氏名を書きます。「別紙在中」と書き添えておくと、より丁寧です。
コピー用紙で代用OK!別紙の作成ガイド
字に自信がない幹事へ。失敗しない「硬筆筆ペン」と表書きのコツ

「レイアウトは分かった。でも、表書きの『代表者名』と『御祝』はどうしても手書きしなきゃいけない…」
そう、ここが最後の難関です。普段PCばかり使っている私たちにとって、筆ペンでの執筆は恐怖でしかありません。
しかし、道具選びさえ間違えなければ、この恐怖は克服できます。ここでは、「筆ペン」と「硬筆タイプ」の関係性を理解し、初心者が選ぶべきツールを具体的に紹介します。
毛筆タイプは事故の元。「硬筆タイプ」を選ぶべき理由
多くの人がやりがちな失敗は、コンビニで適当に「本格的な毛筆タイプ」の筆ペンを買ってしまうことです。穂先が柔らかく、本物の筆のようにしなる毛筆タイプは、トメ・ハネ・ハライのコントロールが非常に難しく、書き慣れていない人が使うと線が震えたり、太くなりすぎたりして「事故」の元になります。
幹事の皆さんが選ぶべきは、間違いなく「硬筆(こうひつ)タイプ」の筆ペンです。
「筆ペン」の中でも「硬筆タイプ」は、ペン先がサインペンやボールペンのように硬く加工されています。 そのため、普段使い慣れているボールペンと同じ感覚で書くことができ、それでいて筆特有の「強弱」や「墨の色」を表現できるという、まさに初心者のための救世主です。
プロが選ぶ「失敗しない筆ペン」2選
私が研修の現場でもおすすめしている、絶対に失敗しない硬筆筆ペンを2つ紹介します。文具店やコンビニで見かけたら、迷わずこれを手に取ってください。
初心者幹事におすすめの「硬筆筆ペン」比較
| 商品名 | メーカー | 特徴 | おすすめの用途 |
|---|---|---|---|
| 筆まかせ | パイロット | 極細のペン先で、ボールペンそのものの書き心地。インクフローが良く、カスレにくい。 | 住所や氏名など、細かい文字を書きたい時。 |
| 筆ごこち | 呉竹 | 適度な弾力があり、少し太めの線も出せる。文字に「味」が出やすい。 | 表書きの「御祝」や、少し大きく名前を書きたい時。 |
これらのペンを使えば、達筆とはいかなくとも、「丁寧に書かれた、読みやすい文字」は確実に書けます。そして、ビジネスにおいては「達筆」であることよりも「丁寧で読みやすい」ことの方が、はるかに価値が高いのです。
「御出産御祝」の4文字はNG?表書きの迷信と真実
筆ペンを手に取った時、もう一つ迷うのが表書きの言葉選びです。「御出産御祝」と書こうとして、「あれ、4文字は『死文字』で縁起が悪いのでは?」と不安になったことはありませんか?
結論から言うと、「御出産御祝」の4文字は全く問題ありません。
かつては4文字を避ける風潮もありましたが、現代のマナー、特にビジネスシーンにおいては、「御祝」の2文字だけでは何のお祝いか分かりにくいため、より具体的な「御出産御祝」の方が丁寧であるとされています。
それでも気になる場合は、以下の書き方で回避することも可能です。
- 「御祝」(最も無難で一般的)
- 「祝 御出産」(間にスペースを空けて5文字扱いにする)
- 「御出産お祝」(「お」を入れて5文字にする)
[EBIボックス]
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 迷ったらシンプルに「御祝」の2文字をおすすめします。
なぜなら、文字数が少ない方がバランスを取りやすく、書き損じのリスクも減るからです。「御出産御祝」と画数の多い漢字を4つ並べてバランスを崩すより、中央に堂々と「御祝」と書く方が、見た目の完成度は格段に上がります。
「お返しは不要です」スマートな内祝い辞退の伝え方

連名で出産祝いを贈る際、幹事として忘れてはならないのが「内祝い(お返し)」に対する配慮です。
通常、出産祝いを受け取った側は、頂いた金額の半額〜3分の1程度を「内祝い」としてお返しするのがマナーです。しかし、連名で一人当たり1,000円〜3,000円程度を出し合った場合、相手にとって一人ひとりにお返しを用意するのは大変な手間になりますし、送料の方が高くついてしまうこともあります。
そこで、「内祝い(お返し)」と「一筆箋」の関係をうまく活用し、相手の負担を減らすのが「デキる幹事」の腕の見せ所です。
連名だからこそ必要な「お返し辞退」の配慮
4名以上の連名で贈る場合、基本的には「お返しは辞退する(不要である)」旨を伝えるのが最大のマナーです。
これを伝えることで、相手は「お返し選び」や「配送手配」という産後の大変な時期のタスクから解放されます。あなたのちょっとした一言が、相手にとっては大きな救いになるのです。
そのまま使える文例集(上司向け・同僚向け)
お返し辞退のメッセージは、別紙の余白に書き添えるか、小さな「一筆箋」に書いて別紙と一緒に中袋に入れます。相手との関係性に合わせた文例を紹介します。
【同僚・部下向け】(少しカジュアルに、温かく)
チーム一同より、心ばかりのお祝いです。
○○さんの負担になるといけませんので、内祝いなどのお心遣いは無用にお願いいたします。
赤ちゃんとの時間を大切に過ごしてくださいね。
【上司・先輩向け】(失礼にならないよう、丁寧に)
部署一同より、ささやかながらお祝いをお贈りいたします。
誠に勝手ながら、お返しのお心遣いはなさいませんよう、お願い申し上げます。
○○様の健やかな毎日をお祈りいたします。
一筆箋の選び方と添え方
一筆箋は、文具店や100円ショップで売っているシンプルなもので構いません。季節の花が描かれたものなど、少し彩りがあるものを選ぶと、事務的な別紙に華やかさが加わり、お祝いの気持ちがより伝わります。
別紙を三つ折りにした後、その一番上にクリップで留めるか、中袋を開けた時に最初に目に入る位置に入れておきましょう。
よくある質問(金額の書き方・中袋の有無など)
最後に、幹事の皆さんが作業中にふと疑問に思う細かいポイントについて、Q&A形式でお答えします。
Q1. 金額は「壱萬圓」と大字(だいじ)で書くべきですか?
A. 必須ではありませんが、書けると格好いいです。
正式には改ざん防止のために「壱、弐、参」といった大字を使いますが、最近は横書きの欄がある中袋も多く、その場合は算用数字(10,000円)でも全く問題ありません。縦書きの場合は、漢数字の「一、二、三」でもマナー違反ではありませんが、大字を使うとより丁寧な印象になります。
- 一 → 壱
- 二 → 弐
- 三 → 参
- 五 → 伍
- 十 → 拾
- 万 → 萬
Q2. 中袋がない封筒タイプの場合はどうすればいいですか?
A. 封筒の裏面に直接、金額と住所を書きます。
カジュアルなのし袋や、金額が少ない場合(数千円程度)に使われる封筒タイプには、中袋がついていないことがあります。その場合は、封筒の裏面左下に、住所と金額を記載してください。別紙はそのまま封筒に入れます。
Q3. 手元にボールペンしかありません。これで書いてもいいですか?
A. 中袋や別紙はOKですが、表書きは避けましょう。
中袋の住所や別紙の細かい文字は、読みやすさを優先して黒のボールペンで書いても許容範囲です。しかし、のし袋の表書き(御祝や代表者名)をボールペンで書くのは、あまりに事務的で貧相に見えてしまうため、マナー違反とされることが多いです。どうしても筆ペンがない場合は、太めの黒フェルトペンやサインペンで代用してください。
まとめ:道具と知識で、幹事の株を上げよう
出産祝いの連名、特に4名以上の場合の書き方について解説してきました。
ポイントを振り返りましょう。
- 4名以上なら「別紙」が正解: のし袋の表書きは「代表者名+外一同」ですっきりさせ、詳細は別紙に書く。
- コピー用紙でOK: 奉書紙がなくても、A4コピー用紙を三つ折りにすれば立派な別紙になります。
- 硬筆筆ペンを使う: 「筆まかせ」などの硬筆タイプを使えば、字に自信がなくても失敗しません。
- お返しは辞退する: 一筆箋で「お返し不要」と伝えるのが、相手への最高のプレゼントです。
幹事という役割は、手間がかかり、プレッシャーも感じるものです。しかし、あなたの作ったその美しいのし袋と、配慮の行き届いた別紙は、受け取った同僚や上司に「おっ、佐藤くんは仕事が丁寧だな」という印象を確実に残します。
さあ、まずは手元のコピー用紙を一枚取り出し、三つ折りにするところから始めてみてください。この記事を見本にすれば、3分後には完璧なリストが完成しているはずです。
あなたの心のこもったお祝いが、無事に相手に届くことを応援しています。
[参考文献リスト]


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