読者の皆様へ
「健康診断の数値をきっかけに、ご自身の体と真剣に向き合おうとしているあなたの姿勢は素晴らしいです。専門用語で不安を煽るのではなく、科学的な事実と臨床経験に基づき、あなたが安心して判断できるための『信頼できる情報』と『具体的な選択肢』を一緒に整理していきましょう。」
健康診断で肝機能の数値を指摘され、健康のためにルイボスティーを試したいけれど、かえって体に悪い影響がないか不安に思っていませんか?
ご安心ください。この記事では、内科医の視点から「過度に心配する必要はないが、正しい知識を持って慎重に始めるべき」という結論に基づき、具体的なアクションプランを解説します。ネットの噂に惑わされず、ご自身の体と安心して向き合うための「次の一歩」が明確になります。
この記事を読めば、ルイボスティーと肝臓の科学的な関係、医師に相談する際のポイント、そして安全な始め方が分かります。
まずはご安心を。ルイボスティーが「肝臓に悪い」の真相

「ルイボスティーは肝臓に悪い」と聞いて、不安な気持ちになりますよね。ご安心ください、私もクリニックの現場で患者さんからこの質問を本当によく受けます。
多くの方が不安に感じる背景には、どうやら特定の情報源があるようです。インターネット上の噂をたどっていくと、2010年に発表された、ある医学的な症例報告に行き着くことがあります。その症例報告では、ルイボスティーを毎日1リットル飲んでいた方に肝機能障害が起きた、という内容が記されています。
この報告が、「ルイボスティーは肝臓に悪い」という情報の主な根拠として広がっているようです。
ただし、ここで最も重要なことは、このような反応が起きることは非常に稀であるという事実です。世界中で多くの人がルイボスティーを飲んでいますが、同様の報告はほとんどありません。ですから、この一つの報告だけを見て「ルイボスティーは危険だ」と結論づけるのは、医学的に見て早計と言えるでしょう。
医師が解説する「肝機能が気になる人」が知るべき3つの事実

それでは、専門家として「肝機能が気になる人」がルイボスティーと向き合う上で、知っておくべき医学的な事実を3つに整理して解説します。
事実1:ほとんどの人には安全で、有益な点も多い
まず大前提として、ルイボスティーは大多数の健康な方にとっては安全な飲み物です。ノンカフェインであるため、カフェインが苦手な方や就寝前でも安心して飲むことができます。また、抗酸化作用を持つとされるポリフェノールなどの成分が含まれていることも事実です。
事実2:稀な「肝機能障害」の報告は、リスクがゼロではない証拠
先ほど触れた2010年の症例報告は、私たち専門家にとって「リスクはゼロではない」という重要なサインです。ルイボスティーと肝機能の関係性は、限定的な影響にとどまるものですが、特に元々肝臓に何らかの懸念がある方の場合、体が予期せぬ反応を示す可能性を完全に否定することはできません。
事実3:「良いか悪いか」の二元論ではなく「自分の体に合うか」が重要
健康に関する情報では、「〇〇は体に良い」「××は体に悪い」という単純な二元論が好まれがちです。しかし、医学の基本は「その人の体質や健康状態によって、食べ物や飲み物の影響は変わる」という考え方です。肝機能の数値が気になる方は、一般的に健康とされるものであっても、ご自身の体に合うかどうかを慎重に見極める必要があります。
あなたはどっち?ルイボスティーとの付き合い方

【実践ガイド】今日からできる、安心の3ステップ

では、具体的にどうすれば安心してルイボスティーを試すことができるのでしょうか。私が患者さんにお勧めしている、安全な3つのステップをご紹介します。
Step1: かかりつけ医に相談する
最も重要で、そして確実な第一歩は、かかりつけの医師に相談することです。「こんなことを聞いていいのかな?」と遠慮する必要は全くありません。医師に正確な情報を伝えることで、より的確なアドバイスがもらえます。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 医師に相談する際は「友人に勧められたのですが」と前置きすると、会話がスムーズに進みやすいです。
なぜなら、この一言は「自分で勝手に判断しているのではなく、客観的な情報として相談したい」という姿勢を示すことができるからです。多くの医師は、患者さんが積極的に情報収集し、相談してくれることを歓迎しています。この一言が、あなたの真剣な悩みを伝え、医師との信頼関係を築く助けになります。
医師への質問リスト(印刷・スマホ画面で見せてもOK)
| 項目 | 伝えること・質問すること(例文) |
|---|---|
| 現状の共有 | 「健康診断で肝機能の数値を指摘されています。最近、友人にノンカフェインで体に良いとルイボスティーを勧められました。」 |
| 意思の伝達 | 「健康のために、ルイボスティーを飲んでみようかと考えています。」 |
| 具体的な質問 | 「私の現在の肝臓の状態で、ルイボスティーを飲む際に何か注意すべき点はありますでしょうか?」 |
| 量の確認 | 「もし飲むとしたら、1日どのくらいの量から始めるのが適切でしょうか?」 |
Step2: 少量・薄めから試す
医師から特に問題ないと言われた場合でも、いきなりたくさん飲むのはやめましょう。まずはご自身の体に合うかどうか、少量から試すのが鉄則です。1日にマグカップ1杯程度、少し薄めに淹れたものから始めてみてください。
Step3: 体調の変化を記録する
ルイボスティーを飲み始めてから、何か普段と違う体調の変化がないか、少しだけ意識を向けてみてください。肝機能障害の初期症状と、医師への相談は密接に関連しており、万が一のサインに早く気づくことが、あなたの体を守る上で非常に重要です。
注意したい体調変化チェックリスト
| チェック項目 | 具体的な症状 |
|---|---|
| 全身の倦怠感 | なんとなく体がだるい、疲れやすい |
| 消化器系の不調 | 吐き気、食欲不振 |
| 皮膚の症状 | 皮膚のかゆみ、白目が黄色くなる(黄疸) |
もし、これらのリストにあるような症状が一つでも現れた場合は、すぐにルイボスティーを飲むのを中止し、かかりつけの医師に相談してください。
ルイボスティーに関するよくある質問(FAQ)
最後に、患者さんからよく寄せられるその他の質問にお答えします。
Q. 腎臓が悪い人でも飲めますか?
A. ルイボスティーはカリウムを比較的多く含みます。腎機能が低下している方は、カリウムの排出がうまくいかず、高カリウム血症という危険な状態になる可能性があります。腎臓に疾患のある方は、必ず主治医に相談してください。
Q. 妊娠中や授乳中に飲んでも大丈夫ですか?
A. ノンカフェインであるため、多くの妊婦さんや授乳中の方に飲まれています。ただし、特定のハーブが妊娠に影響を与える可能性もゼロではありませんので、心配な方は産婦人科の先生に一言確認するとより安心です。
Q. 1日の適量はどのくらいですか?
A. 医学的に明確な基準はありませんが、どんな飲み物も常識の範囲を超えて飲むことは推奨されません。まずは1日に2〜3杯程度を目安に楽しむのが良いでしょう。
Q. 他に飲んではいけない人はいますか?
A. 特定の植物に対するアレルギーがある方は注意が必要です。また、胃腸が非常にデリケートな方が多量に飲むと、お腹が緩くなることがあります。何らかの持病で治療中の方は、一度主治医に確認することをお勧めします。
まとめ:正しい知識で、ルイボスティーと上手に付き合いましょう
この記事では、ルイボスティーと肝機能の関係について、医学的な視点から解説しました。
要点をまとめると、「ルイボスティーは多くの方にとって安全な飲み物ですが、肝機能の数値が気になる場合は、自己判断で始めるのではなく『まず医師に相談し、少量から試す』のが鉄則です」ということになります。
正しい知識を持つことで、あなたはもうネットの情報に振り回される必要はありません。自信を持って、ご自身の健康と向き合ってください。
まずは、この記事の「医師への質問リスト」を参考に、かかりつけの先生に相談することから始めてみましょう。
[参考文献リスト]
- Miyamoto Kidney Clinic Blog, “腎臓内科医が解説「ルイボスティーを飲んではいけない人」とは?”
- Otonanswer, “ルイボスティー、「血糖値が下がる」は本当? 腎不全の人は飲んでも大丈夫? 専門医に聞く”
- Sinisalo, M., et al. (2010). “Rooibos tea as a probable cause of hepatotoxicity”. Clinical Journal of Gastroenterology, 3(5), 289-291.


コメント