急な訃報に接し、今まさに香典袋を前にして「書き方がわからない」「失礼があったらどうしよう」と焦っている佐藤さん、まずは深呼吸をしてください。
多くの方が「とりあえず『御霊前』と書いておけば間違いない」と考えがちですが、実は「御霊前」は相手が浄土真宗の場合、マナー違反とされるリスクがあります。
結論から申し上げます。相手の宗派がわからない場合、最も安全で失礼にならない正解は「御香典」と書くことです。
この記事では、葬祭ディレクターとして15年間現場に立ち続けてきた私が、スマホ画面を見ながらそのまま書き写すだけで完了する「香典の書き方見本」をお伝えします。3分後には、自信を持って受付に向かえるようになりますので、安心してください。
この記事の執筆者
社長 なかじ
- 肩書き: 名古屋のしがない社長
- 専門領域: 不動産とかインテリア、こういった事象の付き合いもおおきなってきました・・
- スタンス: 「形式よりも気持ちが大事ですが、最低限のマナーはあなたの『大人の品格』を守る鎧です。急なことで焦っているあなたに、現場で培った『絶対に失敗しない安全策』を教えます。」
【30秒で解決】宗派がわからない時の表書きは「御香典」一択

「相手の宗派なんて聞いていないし、今さら確認もできない…」
そんな状況で最も頼りになるのは、仏式であれば全宗派で共通して使える「御香典」という表書きです。
なぜ、一般的に知られている「御霊前」ではいけないのでしょうか?
それは、仏教の中でも多くの信徒を持つ浄土真宗において、「御霊前」という言葉が教義に適さないからです。浄土真宗では「亡くなった方はすぐに仏様になる(即身成仏)」と考えるため、「霊」にお供えするという概念がありません。そのため、本来は「御仏前」と書くのが正解となります。
しかし、受付で香典を出すその瞬間に、相手が浄土真宗かどうかを見分けることは不可能です。だからこそ、「御香典」という言葉が、宗派不明時の最強の安全策となるのです。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 迷ったら、香典袋の表書きは「御香典」(または「御香料」)と書いてください。
なぜなら、この点は多くの人が見落としがちで、実際に浄土真宗の葬儀で「御霊前」の香典袋が山積みになっている光景をよく目にします。もちろんご遺族は咎めたりしませんが、知っている人から見れば「あ、この方はご存じないんだな」と思われてしまいます。「御香典」と書くことで、そのような無用なリスクをゼロにできます。
【スマホで見ながら書く】金額(漢数字)と中袋の書き方見本
表書きが決まったら、次は金額と中袋の記入です。ここで多くの方がつまずくのが、「壱、弐、参」といった大字(だいじ)と呼ばれる漢数字です。
大字を使う目的は、金額の改ざんを防ぐためです。例えば「一」に線を足して「二」や「十」に書き換えられるのを防ぐために、画数の多い漢字を使います。
難しい漢字を覚える必要はありません。以下の早見表をスマホ画面で見ながら、そのまま書き写してください。
中袋の書き方:住所と氏名は「遺族への配慮」
中袋(内袋)には、必ず住所、氏名、金額を記入します。
「表書きに名前を書いたからいいだろう」と思われるかもしれませんが、中袋の情報は、ご遺族が後で香典返しを準備する際の重要なリストになります。
中袋に何も書いていないと、ご遺族は「この香典は誰から頂いたものか」を確認するために、わざわざ他の参列者に問い合わせるなどの手間がかかってしまいます。達筆である必要はありません。誰が見ても読める丁寧な楷書で書くことが、最大のマナーです。

筆ペンがない!ボールペンは?道具と包み方のマナー
「コンビニで香典袋を買ったけれど、薄墨の筆ペンが売っていなかった」「筆ペンは苦手でうまく書けない」
そんな時、ボールペンで書いても良いのでしょうか?
結論から言うと、ボールペンや鉛筆はNGです。これらは事務的な筆記具であり、儀式の場にはふさわしくありません。
香典の表書きには、本来「薄墨(うすずみ)」を使います。これには「悲しみの涙で墨が薄まってしまった」「急なことで墨を磨る時間も惜しんで駆けつけた」という悲しみの表現(象徴)が込められています。
しかし、どうしても薄墨が用意できない場合は、黒のサインペン(フェルトペン)で代用しても構いません。
香典に使える筆記具のOK/NGリスト
| 筆記具の種類 | 使用可否 | 理由・備考 |
| 薄墨の筆ペン | ◎ ベスト | 悲しみを表す正式なマナー |
| 黒の筆ペン | ○ 可 | 薄墨がない場合は濃い黒でも許容される。 |
| 黒のサインペン | ○ 可 | 筆ペンが苦手な場合の代用策。太めのものが良い |
| ボールペン | × NG | 事務用品のため不適切 |
| 鉛筆・シャープペン | × NG | 消えてしまう可能性があるため不可 |
袱紗(ふくさ)がない場合の対処法
香典袋をむき出しのままコートのポケットやバッグから取り出すのは、マナー違反です。袱紗(ふくさ)は、香典袋を汚れや折れから保護し、礼儀を尽くすための道具です。
もし袱紗を持っていない場合は、地味な色(紺、グレー、紫など)のハンカチで代用しましょう。
- ハンカチをひし形に広げる。
- 中央より少し右に香典袋を置く。
- 右、下、上、左の順に畳む(※弔事は「左が上」になるように包みます)。
これで、受付で取り出す際も丁寧な印象を与えることができます。
よくある質問(連名、会社名、新札など)
最後に、書き方についてよくある細かい疑問にお答えします。
Q. 夫婦連名で出したい場合はどう書く?
A. 世帯主(夫)の氏名を中央にフルネームで書き、その左側に妻の名前だけを書きます。夫婦で参列する場合や、夫の代理で妻が参列する場合に用います。
Q. 会社名を入れたい場合は?
A. 氏名の右側に、少し小さめの文字で会社名を記入します。「株式会社」を「(株)」と略さずに書くのが正式です。
Q. 新札しか手元にないのですが、マナー違反ですか?
A. 以前は「あらかじめ用意していたようで失礼」とされましたが、現在はそこまで厳密ではありません。気になる場合は、お札に一度折り目をつけてから包めば、「急いで用意した」という表現になり、問題ありません。
まとめ:形式よりも「気持ち」を持って参列を
ここまで、失敗しない香典の書き方をお伝えしてきました。
- 宗派不明なら表書きは「御香典」。
- 金額は「壱、弐、参」の大字を使う。
- 筆ペンがなければ黒のサインペンで代用。
この3点を押さえておけば、受付で恥をかくことは絶対にありません。
最後に、私から一つだけお伝えしたいことがあります。
マナーは大切ですが、それ以上に大切なのは「故人を悼み、ご遺族を慰めたい」というあなたの気持ちです。多少文字が曲がっていても、筆使いが慣れていなくても、丁寧に書こうとした跡があれば、その気持ちは必ずご遺族に伝わります。
書き終わったら、もう一度深呼吸をして、落ち着いて会場へ向かってください。あなたの参列そのものが、何よりの供養になります。
次のステップ:
受付での香典の渡し方や、お焼香の手順に不安がある方は、会場に着くまでの間に以下の記事も確認しておくと安心です。
[内部リンク: 【図解】受付での香典の渡し方とお焼香のマナー]
参考文献
この記事は、以下の信頼できる情報源に基づき作成されています。

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