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この記事を書いた専門家
佐藤 健一 (Sato Kenichi)
管理栄養士 / 健康食品管理士大手製薬会社の研究開発部門で10年間、機能性表示食品の開発に従事した経験を持つ。現在は独立し、科学的根拠に基づく健康情報の監修や、企業のコンサルティングを手掛ける。自身のデスクワーク経験から、VDT作業に悩む人々の課題解決をライフワークとしている。「希望を持たせつつも、誇張はしない」がモットー。
「夕方になるとPCの画面がかすむ…」
毎日デスクワークをされているあなたへ、まずはお疲れ様です、と伝えさせてください。そのお悩み、私も経験者として、そして専門家として、とてもよく分かります。
結論から申し上げますと、最新の研究においてブルーベリーは「一時的な目の疲労感を和らげる」可能性が示されています。しかし、残念ながら、ブルーベリーは慢性的な眼精疲労の“治療薬”ではありません。
この記事では、巷のイメージ広告に惑わされることなく、科学的根拠に基づき「ブルーベリーに期待できること・できないこと」の境界線を正直にお伝えします。
この記事を読み終える頃には、ご自身の症状にブルーベリーが有効かをご自身で判断でき、もし試す場合にも「失敗しない製品選び」ができるようになっているはずです。
なぜ?あなたの目が夕方3時に限界を迎える「VDT眼精疲労」の正体

管理栄養士として活動していると、「夕方になると目がしょぼしょぼするんです」というご相談を本当によく受けます。特に、一日中パソコンと向き合うお仕事をされている方にとっては、切実な問題ですよね。
この目の疲れの多くは、VDT(Visual Display Terminals)作業が原因で引き起こされる眼精疲労です。VDT作業とは、パソコンのモニターなどを見続ける作業全般を指します。
私たちの目には、「毛様体筋」というピントを調節するための筋肉があります。近くのモニターを見続けるVDT作業は、この毛様体筋がずっと緊張している状態、いわば「目にとっての筋トレ」を何時間も続けているようなものです。このVDT作業による目の酷使が、結果として眼精疲労につながるのです。
ですから、夕方頃に目の奥が重く感じたり、ピントが合いにくくなったりするのは、あなただけが特別に弱いわけではなく、むしろ当然の体の反応と言えるでしょう。まずはこの事実を知って、ご自身を責めないでくださいね。
【科学の結論】ブルーベリーは救世主か、気休めか?アントシアニンの真実

さて、多くの方が抱えるVDT眼精疲労に対して、ブルーベリーは一体どこまで有効なのでしょうか。ここで重要になるのが、「ビルベリー」という品種に含まれる「アントシアニン」という成分です。
一般的に「目に良い」とされる研究で用いられるのは、食用のブルーベリーよりも、北欧などで自生する野生種の「ビルベリー」であることがほとんどです。なぜなら、ビルベリーは、有効成分である紫色の色素「アントシアニン」を特に豊富に含有しているからです。
では、アントシアニンはどのように目に作用するのでしょうか。
私たちの目の網膜には、「ロドプシン」という、光の情報を感知するためのたんぱく質が存在します。目を使うとロドプシンは分解され、すぐに再合成されることで、私たちは「見る」という機能を維持しています。しかし、目を酷使すると、ロドプシンの再合成が追いつかなくなり、目の疲れやかすみの一因となります。
近年の研究では、アントシアニンが、このロドプシンの再合成を促進する働きをサポートする可能性が示唆されています。これが、ブルーベリーが目に良いとされる科学的なメカニズムの根幹です。
アントシアニンが目の疲労感を和らげる仕組み

ただし、ここで正直にお伝えしなければならないことがあります。国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所のデータベースによれば、ビルベリー抽出物の摂取がVDT作業による目の疲労を改善したという肯定的な研究がある一方で、効果が見られなかったという研究結果も存在します。
つまり、アントシアニンの効果はまだ研究途上の段階であり、すべての人に劇的な効果を保証する「魔法の弾丸」ではない、ということを冷静に理解しておくことが非常に重要です。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: ブルーベリー製品を「治療」のためではなく、「良いコンディションを維持するためのサポーター」として捉えましょう。
なぜなら、開発者時代、私は「いかに成分の効果を最大化するか」ばかりを考えていました。しかし、多くの消費者の方とお話しする中で、「サプリさえ飲めば大丈夫」という誤解が、かえって根本的な生活習慣の改善を遅らせてしまう現実を目の当たりにしたのです。この経験から、専門家として「現実的な期待値」を伝えることの重要性を痛感しています。
失敗しないための実践ガイド:あなたに合ったブルーベリー製品の選び方

ブルーベリーの効果と限界をご理解いただいた上で、「では、もし試すなら何を選べば良いのか?」という疑問にお答えします。ここで客観的な基準となるのが、「機能性表示食品」という制度です。
機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出が受理された食品です。機能性表示食品の有効性の根拠は、ヒトを対象とした臨床試験のデータに基づいています。
「機能性表示食品」と「いわゆる健康食品(サプリメント)」の比較
| 比較項目 | 機能性表示食品 | いわゆる健康食品(一般のサプリメント) |
|---|---|---|
| 機能性の表示 | 科学的根拠に基づき「目の疲労感を緩和する」などの表示が可能 | 機能性に関する具体的な表示はできない |
| 国の関与 | 消費者庁への届出制(国の審査ではない) | 特になし(食品衛生法などの規制は受ける) |
| 信頼性の目安 | 届出情報として、根拠となった研究論文が公開されている | 事業者の自主的な情報開示に依存する |
| 選び方のポイント | 信頼性を重視し、根拠を確認したい方向け | 成分量や価格などを自分で比較判断できる方向け |
この表が示すように、信頼できる製品を選ぶ一つの基準として、機能性表示食品のパッケージに記載されている「届出番号」や「機能性関与成分(ビルベリー由来アントシアニンなど)」の含有量を確認することが有効です。
しかし、ここで最も強調したい「典型的な失敗パターン」は、サプリメントに頼りきってしまい、眼精疲労の根本原因である生活習慣を疎かにしてしまうことです。
ブルーベリー製品は、あくまで補助的な選択肢です。以下の対策をまず優先してください。
- 1時間に10分程度の休憩を取り、遠くを見る
- PCモニターの明るさを部屋の明るさに合わせる
- 意識的にまばたきの回数を増やす
これらの基本的な対策が、あなたの目を守るための主役であることを忘れないでください。
よくある質問(FAQ):ブルーベリーに関する最後の疑問、専門家が正直に答えます
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最後に、皆様からよくいただく質問に、一問一答形式で誠実にお答えします。
Q1. 冷凍ブルーベリーやジャムでも効果はありますか?
A1. アントシアニンは熱や冷凍に比較的強い栄養素なので、含まれてはいます。しかし、機能性表示食品で報告されているような効果(例:アントシアニン40mg/日)を食品から毎日安定して摂取するのは、量や品質の面で非常に難しいのが現実です。
Q2. 副作用や、食べ過ぎによるデメリットはありますか?
A2. ブルーベリーは食品ですので、通常の食事の範囲で摂取する分には安全です。ただし、食物繊維が豊富なので、一度に大量に食べ過ぎるとお腹が緩くなる可能性があります。サプリメントの場合は、製品に記載されている一日摂取目安量を必ず守ってください。
Q3. サプリメントは、いつ飲むのが最も効果的ですか?
A3. アントシアニンの効果は、摂取後数時間でピークに達し、24時間程度で体外に排出されると報告されています。そのため、医薬品のように厳密なタイミングはありませんが、ご自身の生活リズムに合わせて、毎日続けやすい時間に飲むのが良いでしょう。例えば、デスクワークの前に飲む、などを習慣にするのも一つの方法です。
まとめ:あなたの目を守るための、賢明な第一歩
この記事の要点を、改めて確認しましょう。
- ブルーベリーの役割: 慢性的な眼精疲労の「治療薬」ではなく、VDT作業による「一時的な目の疲労感を和らげるサポーター」です。
- 根本的な対策: 最も重要なのは、PC作業環境の改善や適度な休憩といった、日々の生活習慣の見直しです。
- 賢い製品選び: もし補助的に試すのであれば、科学的根拠が公開されている「機能性表示食品」を一つの目安にすることをお勧めします。
あなたのその目の疲れは、正しい知識でマネジメントできます。多くの情報に振り回されることなく、まずはご自身の体と生活習慣にていねいに向き合うことから始めてみてください。
[CTA (行動喚起)]
この記事を閉じたら、まずは今日から、1時間に1回の休憩とPCモニターの明るさ調整を実践してみませんか?
その上で、補助的な選択肢を検討する際には、この記事で学んだ基準を参考に、製品のパッケージ裏の情報をチェックしてみてください。あなたの賢明な一歩が、未来の目の健康を守ることに繋がります。
[参考文献リスト]
- 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所, 「『健康食品』の安全性・有効性情報」, ビルベリーの項目
- 消費者庁, 「機能性表示食品の届出情報データベース」


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